改造ネタその4

◆ブーストチャンネルのゲイン最適化

もう一か所,改造してしまいました。

ダンブルの回路はVOLUME,半固定TRIM,RATIO,LEVEL,MASTERという5つのボリュームが仕込んであり微妙なゲイン調整を可能にしています。
ダンブル回路をコピーしたとしても,ゲインバランスを微調整しないとスムースな倍音を持つ絶妙なトーンにはなりません。

この5つのボリュームを適切に使いこなしてクリーンとオーバードライブの両方を作りこんでいくわけで,使いこなしは非常に難しいといわれています。

操作は簡単なほうがよいに決まっています。このプリアンプのブーストチャンネルでは2つのボリュームで歪と音量を決められるようにしました。

ゲインバランスを自動的にとり,1つのゲイン設定でクランチからフルドライブまでスムースな歪が得られるように工夫しています。

回路的には古典型フェーズインバータを応用した可変ゲイン回路としています。

古典型位相反転回路はカスケード接続された2段の反転増幅回路を利用します。
1段目と2段目の間にアッテネータを入れ1段目の増幅分だけ信号を減衰させることにより,位相反転した信号を作り出します。
また応用としてカソードを共通化して,差動回路風にすることでバランスを取っています。
さらにギターアンプで広く使われるロングテール型位相反転回路と同様にグリッド・バイアス抵抗をひとまとめにして,ゲインリダクションのアタックとディケイを制御しています。

調整ポイントは多くないのですが,1段目と2段目の間に入るアッテネータは少し絞ってみたところ非常にスムースな音が得られることが分かりました。
こういったダイナミックな動作と演奏してみた感触はシミュレーションでは再現できません。

全体的なゲインは落ちてしまういますので,特徴的だったぶっ壊れそうなブーストサウンドは影を潜めます。
反面,335の単音では非常に伸びやかでスムーズ。一方ストラトでのコードもつぶれずに重奏的な響きを残してくれます。

プリアンプの設計は一見,増幅段をカスケードに接続していくだけのような単純な回路に見えます。
しかし,実際に作ってみればわかりますが,それだけではゲインが高すぎるだけで音になりません。

増幅と減衰,HPF・LPF・BEFを繰り返すことで程よく歪みの乗ったスムースな音色が出来上がっていくわけですね。

お酒の醸造工程のようなもので,トーンを磨いていくわけです。
雑味を消しためのフィルター,芳醇な香りを醸し出すためのクリッピング,そういった複雑な手順の結果,トーンが出来上がっていきます。

一例としてこれを紹介しましょう。
メサ・ブギーの5バンドグラフィックイコライザの周波数応答です。

ブギーのアンプには5バンドのGEQを搭載しているモデルがありますが,これが結構な優れもので,V字に設定すると非常に気持ち良いザクザク・サウンドが得られます。

mesa_boogie_GEQ.png

ふたつの山を持つ赤い線がV字設定の時の周波数特性です。

80Hz付近と5kHzがブースとされて750Hz付近のミドルがごっそりとカットされています。
ローエンドもハイエンドもスムーズに落ちていくので,なるほどこれは気持ちの良い音になるわけです。

ギター用のスピーカーも似たようなトーンカーブを持っていて,クローズドバックならば低域が少しブーストされ,
そこから中高域に向けてだらだらと下がっていき1kHz位に谷があって,2kHz~5kHzでピークを持ちます。
こういった典型的なギター用スピーカーの特性がギターアンプにとって最終的なイコライザとなっています。

特に真空管アンプはスピーカーの個性をよく引き出すことができます。

エレキギターとギターアンプは特に人間が敏感に感じる2kHz~4kHzを複雑かつ微妙に操作します。
ほんのちょっとした違いでも実際に演奏すれば違いが出てきます。

よく言われることですが,電子部品は±10%程度のばらつきは普通に持っています。
一方,音階はもっと精密で,音階が半音異なると周波数は6%変化します。

ギターアンプは部品の個体差や,微妙な静電容量の差,振動による影響がでやすいわけで,
こういった点でオーディオ用のアンプとはまったく違うノウハウが必要になってきます。

まあ,大体適当に作ってみて,あちこちいじり,調整していくわけなんですけどね。。。


改造ネタその3

◆ブーストチャンネルの低域レスポンスの改善とジャリつきの調整

ノーマルチャンネルとディスト―ションチャンネルと比較するとブーストチャンネルは低域が薄いと感じます。
もう少し低域があった方が迫力があり,ツウ好みでしょう。低域が強いと演奏は難しくなりますけどね。

ロリー・ギャラガーのライブ録音を聴くとスピーカーがボコボコいうほどの低音が出ています。
ピッキングに反応してボコっといいます。ここまで出ているとアタックがつぶれたり,コード感がなくなったりしてしまいます。
基本はプリ・イコライザーで低音をカットして,ポスト・イコライザーでは上げてやると,気持ちがよく迫力のある音になります。

ブーストチャンネルはプリイコライザなのでベース・ツマミを上げても低域が飽和するだけで迫力は出ません。
そこで最終段の0.022uFを大きくしてみました。すると劇的ではありませんが,やや改善されるようです。
結果的にマロリーの150'sの0.1uFとしました。SOZOと比較するとジャキっとしたところは引っ込みますが,
コードのまとまりがよくカッティングが気持ちよくなりました。

マロリーにしたせいなのか,トーン回路を変えたせいか,ES335ではハイの上のほうのザラザラしたところが気になります。
そこでプレート・プレート間に入れている47pFを22pFとし,ポストイコライザーとして150pF(C50)を追加しました。
EVM-12Sではこれでよかったのですが,VINTAGE30ではきつい部分が少し残りましたので220pFに交換しました。
(下の回路図は古いままです・・・)
これで2次のLPFとなりますので,ジャリっとした部分を残しつつ,耳障りな成分を抑えることができました。

下の回路図はマスターセクション部分です。図中のC50が追加したコンデンサーです。

マスターセクションでは信号レベルの調整と切り替えを行い,後段へ信号を送ります。
ノーマルチャンネルとブーストチャンネルはそのままでは信号レベルが高すぎるのでATTしています。

preamp_master.png

一気に記事を3本投稿しましたが,ネタはもう少しありますのでそのうちに・・・




トーンコントロールの改造(その2)

前回に続き改造ネタです。
一度フタをあけてしまうと改造癖がムクムクと・・・夜な夜な半田ごてを握る羽目になります。



◆ノーマルチャンネルとブーストチャンネルの共通トーン回路のミドルコントロールを改善

今までのトーン回路はフェンダーの回路をベースにGroove Tubeのアスペン氏のモデファイを行った回路でした。
具体的にはスロープを決めるコンデンサ0.047uFを0.022uFにしています。
温かみのあるローミッドの帯域がでて,フェンダー・トーンをややをファットにした感じになります。

また,通常ベースポットに入る0.1uFが省かれていることに気付いたかもしれません。
このアンプではチャンネル切り替えの都合上,トーン回路の手前に0.1uFを入れて直流を阻止しています。
0.1uFは直流阻止が目的なので,事前にDCカットされているのならば不要です。

さて,この状態からさらにダンブルぽっさを追加することにしました。

ダンブル・アンプのトーン回路はJAZZ/ROCKスイッチに代表されるように複雑な回路構成になっています。
ROCKモードではフェンダーのトーン回路を基本とした回路になり,JAZZモードではギブソン・アンプに似た回路構成になります。
ROCKモードはトレブルつまみを中心とした派手目な音作りで,JAZZモードではベースつまみを中心としたローミッド重視の音作りになっています。

今回はROCKモードのミドル・コントロール回路を参考にしてミドル・コントロールの効き具合を調整しました。

フェンダー方式はミドルを上げるとトレブルも上がってしまいますが,ダンブル氏のトーン回路はミドル谷の部分だけ制御できます。

ダンブル化の手順です。
まず,ベースPOTとGNDの間につながっているミドルPOTを切り離して10kohmの抵抗に交換します。
そしてベースPOTをバイパスするコンデンサを追加しました。
バイパスコンデンサはダンブル系では0.001uF(1000pF)が標準ですがあえて大き目の値(4700pF)を選んでいます。

ミドルを上げていったときに0.022uFの効果がなくなり,4700pFの効果だけが残ります。
0.022uFとのバランスが重要で4700pFは約1/5の値なのでミドルのスロープは5倍の周波数になります。
ダンブルは0.01uFに対して1000pFなので1/10の値になっていますのでミドルのスロープは10倍の周波数まで移動します。
10倍にもなるとほぼ効果がないところまで行ってしまい,1000pFのコンデンサの存在意義が薄れます。
逆に大きくするとミドルの谷が残ります。シミュレーション結果から4700pFを選んでいます。

ミドルPOTはいままでは10kohmでしたがこれを250kohm(Aカーブ)にします。
通常のフェンダー・トーン回路では25kohmくらいまでは効果を感じますが,それ以上に増やしても飽和してしまい,実際にミドルを上昇させる効果は出てきません。
ダンブル回路はベースPOTからGNDにつないだ10kohmと合わせてミドルをコントロールしますので,250kohm(Aカーブ)でもリニアな操作感を得られます。

スロープ抵抗はダンブルは150kohmですが,今回は100kohmのままです。

これでなんとダンブル・トーンに近づきました。
ミドルに独特の艶がでてロベン・フォードぽっさがでました。
特に335のセンター,ストラトのミドルがとても気持ち良くなりました。

ミドルつまみのコントロール範囲も非常に広くとれます。
ミドルを絞ればブラックフェース系のすっきりした音になります。
ミドルを全開にするとツイード系の太い音になります。

トーン回路はいじればいじるだけ音が変わります。
キリがないのでそろそろやめようと思います。



トーンコントロール回路の改造(その1)

半田ごてとギターを握ってカット&トライするのもやめられないのですが,
トーンコントロール回路はスパイスでシミュレーションしてF特の変化を見ることが多いです。

トーンコントロールは単なるフィルターの集合ですから,シミュレーションの結果はかなりあてにできます。

通常はトーン回路のみをシミュレーションするのですが,パワーアンプの入力インピーダンスの影響まで考慮したシミュレーションを実施してみたところ面白いことがわかったので改造してしまいました。



◆ディスト―ションチャンネルのレスポンス改善

トーンスタック出口のイコライザーに入れたシリーズ抵抗は無い方が4kHz付近のレスポンスが向上することがわかりました。これは意外な結果です。

47kohmの抵抗を取り外し,150pFのコンデンサC31のみとします。

この位置に抵抗を入れるなら,普通に考えると抵抗値を大きくした方がCの効きが悪くなりレスポンスが向上すると考えていました。
しかし今回は逆でした。複雑なトーン回路になっているせいか,LPFとしてコンデンサをぶら下げると逆にブースト効果が発生するようです。
パッシブながらQを持ったピーキングのある特性になるようです。結果的にハイの美味しい部分にバンドパスフィルター的な効果がでてくるので好都合です。

シミュレーションでは2dB程度上昇し,Qはやや上がったように見えました。
2kHz~4kHz付近はギターのトーンを生かすにはとても重要な帯域なのでさっそく試してみました。
実際に行ってみると変化は微妙で,トレブルの目盛に換算して0.5くらいの効果でした。
前回の改造で低域も2dB位増えたので丁度良いバランスになったと思います。

さて,この状態で演奏してみます。

パワーコードのミュートを弾いてみると6弦の5フレット(A2)~7フレット(B2)までは気持ちよい程度なのですが,D3~E3までい行くとやや過剰な状態です。スピーカーの特性にもよりますが,音圧のバランスが悪くこの音域だけ強調されて聞こえます。

周波数でいうと150Hz付近です。そこで,トーンのスロープを少しだけ低域側にシフトさせてローミッドを削ることにしました。
ベースポットの0.022uFからGNDへ4700pFを追加しました。
この位置にコンデンサいれるとミドルを上げたときトレブルもつられて上がってしまう現象を緩和することができますので一挙両得です。

0.022uFに対して4700pF(0.0047uF)ですから,あまり変化はありません。
ローミッドがスッキリしたことで気の利かないマーシャルみたいにこもったドンシャリではなく,すっきりしたドンシャリになりました。

スロープ設定は非常にクリティカルなので,好みに応じて可変できるようにしてもよいのですが,
つまみを追加すると扱いが難しくなるので,トレブル,ベース,ミドルの3ノブで行こうと思います。

これで微調整完了です!


調整は続く・・・

パワーアンプを内蔵してしまうというプリアンプとしてはあり得ない挑戦をした結果として色々と調整が必要になってしまっています。

できる限りシンプルな設計にしているので,ひとつ変えると様々な部分に影響が及びます。

先週,ディストーション・チャンネルのゲインを上げる変更を行いましたが,パワーアンプの入力インピーダンスが今までよりも低くなったこともあり,トーン回路の負荷インピーダンスが低下してしまいました。

ローのレスポンスが弱くなり,いっけんまとまりのある音に聞こえますが,迫力がありません。
ローエンドをもう少し伸ばしたほうがいいでしょう。

ということでコンデンサーを交換しました。
トーンスタックのローカット・コンデンサには標準的な数値の0.022uFを使っていましたが,0.047uFに変更します。

これでローエンドが約1オクターブ伸びることになります。
音圧でいうと数dBのUPになると思います。



真ん中のリレーは主役ではないのですが・・・一番目立ちますね。

0.047uFは以前取り外したSOZOをリユースしています。
ついでに,トーンスタックのスロープ調整用のコンデンサを手持ちの中から選んでみました。

ディストーションチャンネルはゲイン段の後ろにイコライザーが入るポストイコライザーなのでトーン回路の影響が非常に大きくなります。
部品の定数だけでなく品種(メーカー)によってトーンに変化が出やすい部分です。

今まではSPRAGUE 710Pという白いフィルムコンデンサーを使ってきました。
昔店頭で購入したものですが最近は見かけません。0.022uFの割には割と大型のコンデンサです。
そこでSOZOとマロリー150S,ロシアンビンテージオイルコンを比較しました。

LPF用のコンデンサとHPF用のコンデンサではトーンに与える影響が異なってきます。
HPFできらびやかな音を出すコンデンサーはLPFに使うとGNDにきらきら成分を逃がすので音が死にます。

今回,SOZOと150Sと比べて710Pとロシアンオイルはピッキングニュアンスがよく残りました。
ダークホースとしてRFTのMKPも試してみましたがSOZOと同じ傾向でした。

影響があるかわからないのですが,710Pとロシアンオイルはリード線が磁性体でした。
ロシアンオイルは外装も磁性体です。ニッケルか鉄でと思います。

以前試したときはSOZOはLPFにもHPFに使えると認識していたのですが,LPFにはより適したコンデンサがあるようです。

結果的にロシアンオイルのほうがコードの分離がよく感じたのでこれを使いました。

トーンスタックのコンデンサー交換のおかげでローエンドが伸び迫力が戻りました。
ハイエンドの差はほんの少しですが,より表情が出るようになった思います。

コンデンサの部品差は抵抗や配線材よりは影響が大きいほうですが,結構微妙です。
さらに,効くところと効きが悪いところあるのは確かです。

あ,あと,入力の配線材を変えました。今まではずっと絹巻エナメル線のツイストペアだったのですが,自作シールド線にしました。
ノイズを防ぐためにシールド線を使おうとするのですが,よいシールド線がなかなかありません。
よいものがない限りは使わないに越したことはありません。ツイストペアでノイズのトラブルが出たこともありません。

最近いろいろ調べているとストラトの内部配線でノイズが乗っていることがわかってきました。そこでギターの内部配線として使っているお気に入りの配線材に網線をかぶせてシールド線を作ってみたところ出来が良かったので,アンプにも使うことにしました。
ギター側はまだ変えていないので近日中には入れ替えようと思っています。

10cmくらいの配線ですが,メリハリでて,コードの分離感もよくなったと感じました。

配線材も適材適所でトーンに対する影響が変わります。
プリアンプのグリッド配線が一番影響が大きく,プレート配線も高電圧なので影響が大きいです。
カソード配線はもともとインピーダンスも電圧も低いので影響は小さいです。

一度フタをあけるといじってしまう悪い癖が出ています。
そろそろ満足なので,オーダーがあれば貸し出しします。
オーダーをお待ちしています。




 | ホーム |  次のページ»»